大まかな題材は「格差」もしくは「グローバル人材」と決まっていて、具体的にどんなテーマにするかは自分たちで決めます。「格差」といっても、地域格差や所得格差などいろいろ考えられますが、僕たちは他がやらないようなテーマにしたいと、ずいぶん悩みました。
マズローの「欲求階層説」によると、人間の欲求は5段階のピラミッド型(生理的欲求・安全欲求・愛情欲求・尊敬欲求・自己実現欲求)に分かれていて、低次レベルの欲求がある程度満たされないと次のレベルの欲求が満たされないと言われています。
僕たちは、年齢によって幸せと感じるレベルもピラミッド型になっているのではないか、という仮説を立てました。
西宮や三宮の駅前で、通りがかりの人たちに「あなたは幸せですか?」と質問を投げかけました。
結果は、10~20代は基本的な幸福感、30~50代になると高レベルに移行し、60~70代ではまた基本的な方向へ移るという傾向がありました。狭い範囲ではありますが、仮説がある程度実証されたことを報告しました。
自分たちで仮説を立てて、行動し研究したこと。その検証のプロセスで、既存のデータを流用するのでなく、学生らしく自分たちの足でアンケートを取りに行ったことと、それに基づいて結論を出していたことが評価につながったようです。
審査員は、甲南大学本部の方々と外部の企業の方も参加していただきました。評価をしていただいた反面、アンケート結果の範囲が限定的だったことなど、細かな部分でもたくさんチェックが入りました。
まず、知らない人に話しかけること自体、最初は勇気がいりました。それまで、年上の人や社会人と話す機会が少なかったので緊張しました。快く回答してくださる方もいれば、「無理無理!」と迷惑そうに拒絶されることもあって、何回も心が折れそうになりました(笑)。
それでも、断られることに慣れてくると、そういうもんだなと思えるようになって謙虚な姿勢で臨むようにしました。それから強くなれた気がします。
基礎リテラシーで指導してくださった桐畑先生に、常に疑問を持ちながら生活するようにと学びました。
たとえば、今回のアンケート結果についても、西宮周辺での意見はこうだったけれど、他の地域では違うのではないか?日常でも、スーパーに買い物に行くとなぜこの商品が売れているのか?など。
特に、今回のアンケート調査を行ってから、疑問をもつ視点を心がけるようになりました。
このプロジェクトは、1年生の5月~1月までかけて行う長期的なもので、7人のグループで全てのことを行います。テーマ決定から、ミーティングの進め方、発言の仕方、意見のまとめ方など、1年生にとっては初めての経験ばかりで最初は苦労しました。僕はリーダーをさせてもらっていましたが試行錯誤の連続で、同じグループに親友がいたのでよく相談にのってもらいました。
優勝が決まったときは、親友と抱き合って泣きました。勉強してテストでいい点をとるとかではなく、初めて大きなハードルを越えたという達成感は、4年生になった今まで自分を支えてくれました。
宝塚ホテルで学部長主催のディナーに招待されて、フランス料理のフルコースをいただきました。甲南大学の学長と理事長、学部長がそれぞれのテーブルに座られて、優勝した2つのグループの学生が分かれて座るのですが、とにかく緊張していて、どんな料理を食べたのかあまり覚えていないくらいです(笑)。
ホテルの方からナイフとフォークの使い方などを教えてもらったのですが、ナイフで切るときにキーキーと音を立ててしまったりして(笑)。
それでも、そういった場を経験したことで、雰囲気にのまれないようになったかなと思います。
もうすぐ卒業なんですが、4年間を振り返ってみると、楽しかったことと辛かったことが半々という感じです。辛かったというのは、周囲の友だちに影響されて勉強を頑張ったからで、それは辛くもあったし楽しくもあったというのが正直な感想です。
でも、頑張ってきた分、結果もついてきたし、ごく僅かですが僕のことを慕ってくれる後輩がいるので、進んできた道は正しかったのかなと思っています。社会に出てもやっていけるという自信が持てました。
1年生のときに学ぶ「基礎リテラシー」はCUBEでの4年間も、卒業してからも、きっとバイブルになります。そこで頑張って基礎的な力を身に付けると、違った自分が見えてくると思います。
仮説や調査すること、分析すること、人前でプレゼンするなど、どれもが一連の流れなので、どの力も身につけるように頑張ってください。