一般的に、大学の授業とその学生評価は大きく二つに分かれます。一つは、結果で評価する。すなわち、出席率や授業態度ではなく、最終試験だけで評価するというもの。もう一つは、授業に対する姿勢、出席率や授業態度、最終試験までに実施される課題や小テスト、レポート等を含めて総合的に評価するというものです。
多くの大学、特に、大規模大学といった大教室で授業を実施している大学・学部は、出席をとることも、小テストやレポートをこまめに実施することも難しく、出席する学生の顔を覚えることなどは容易ではないという状況で、前者の形式で授業を進め、学生の評価をする場合が多いです。
CUBEは、定員180名の小規模学部。大規模教室の授業が少なく、多くが小人数クラスの授業となります。学生同士、学生と教職員の距離が近く、小規模であるから可能となる教育の実現を目指して創設されました。小規模学部のCUBEでは、卒業までの4年間、一人一人の学生の成長を、教職員が近くで見守りながら、学生も教職員も「自ら学び、共に学ぶ」ことを可能にする環境が整備されています。
4年間の学生生活を通じて、勉学においてもまた人間的成長においても、ここの学生をサポートしたいという強い思いをもって、CUBEでは勉学や学生生活に関する様々な制度・ルール、そして授業外での活動・イベントが用意されています。
CUBEでは、1年生の授業科目はすべて必修となり、学生は、毎日大学に来て授業に出席することになります。卒業に必要な履修単位は124単位。1年次で40単位を上限に履修することになります。無理な履修計画を立てることがないよう、毎年の履修について上限が定められています。
仮に履修制限がなく、3年間で124単位を取得してしまうと、4年次に何も履修しない学生がでるという望ましくない状況になってしまいます。毎年の履修制限は、4年間を計画的に履修し学年毎に学びを積み上げていくためのものであります。毎年、約40単位を取得することで、ほとんどの学生は3年次終了時点で100単位以上を取得し、3年次の終わりからは就職活動に集中できる状況になります。
そして、4年次での最後の学びは、8単位の卒論プロジェクトが中心となります。卒業論文は8単位の科目なので、他の授業の何倍もの時間と労力を割いて、1年をかけ仕上げることになります。
卒業論文はプロジェクト毎にまとめられ、また各プロジェクトの優秀論文一編を集めた優秀論文集が製本され、4階メディアセンターに所蔵されています。
小人数クラスで目の届くサポート体制で学びを進めていくため、学生の出席が重視されています。当然、学びを通じて成長したいという学生の期待に教師が応えていくことが前提であり、教師が熱意をもって準備した授業に、学生がきちんとした姿勢で参加してくれる状況を作ることが必要となります。そこで、学生が1/3を超える欠席をした場合、成績が不可となるということをルールとしています。このルールの前提は、出席すれば、学べる環境を学部、教員が全力で準備するという意味でもあります。
一般的に、教師がプロとしての意識が低い、あるいは学ぶ意欲のない学生を前にして教える情熱を持てない場合、授業の質が落ちるのみならず、成績評価が甘くなる傾向があります。出席や成績評価を厳しく実施するということは、教師がきちんと授業を行っているということの証でもあります。そのつもりで、学生は自分の成長を期待して真剣に授業に参加してください。
成績は秀・優・良・可・不可の5段階です。授業ごとに秀の人数割合が大きく異なると、秀の取りやすい授業とそうでない授業ができてしまうので、秀の価値を一定に維持するため、原則、秀は上位20%以内としています。
少人数のクラスの場合、試験の点数あるいは成績評価が同一である学生が数名いて、もう1名2名秀を増やすことでパーセントが大きく変わる可能性があるので、20%は多少超えることが許容されています。
同様に、必修科目について、不可の割合を約20%以内に収めるように定めています。これは、再履修の学生が多すぎると、次年度のクラス編成が難しくなることがその理由です。20%以内を大きく超える特別の事情がある場合は、その事由により特例として認めることになります。
大学の運営で最も価値のあることは、会議の回数と時間を減らすことです。それほど無駄な会議が多いということで、その時間を減らし、教員が教育に集中できるようにすることは、学部長として最も大事な仕事だということになります。
CUBEでは、水曜3限に教授会を設定しており、1時間20分で教授会が終了できるよう計画しています。教授会をいかに効率的に進めるかが、学部長の手腕であり、リーダーシップのない学部長であるほど、自分で決められず、皆の意見を必要以上に聴取し余計な時間と労力を費やすことになります。
また、教授会を効率的に進めるには、会議の前にどれだけ関係者と意見調整し、周到な準備を済ませておくかが要件となります。また、会議では、反対意見を言いやすい環境が大事ではあるが、必要以上重きを置くことがないよう、原則、反対であれば修正案を提示することを前提に議論を進めることが大事な要件となります。
もちろん、意見分布をみる、新しいアイデアを見つける場合は、各人の考えを広く聴取し意見交換に時間をかけることで、課題の整理、解決策の方向性を探る場が意味を持つことになります。
2009年度開学当初、CUBEの閉館時間は21時でした。当時、新学部に入学した1期生の学びに対する意欲は高く、多くの学生が毎晩遅くまで学内に残り、宿題をし予習復習をし、友人と長い時間を共にする毎日でした。毎朝9時10時から毎晩9時までCUBEで過ごす学生も多くいました。
そういった状況の下、より多くより長く学びたいということで、多くの学生から閉館時間を延長してほしいとの要望が寄せられました。彼ら彼女らの希望に応えるべく、学生たちの意欲を信じて、閉館時間を現在の23時に延長することとしました。
閉館時間の延長について大学と相談したところ、管理上の問題が生じないか、守衛さん方の仕事が過重にならないか等の諸問題について意見交換しました。学生が最終電車で帰宅できる時間ということも勘案し、23時の閉館としました。
また、21時を過ぎて入退室を認めると、21時を過ぎてどれだけ多くの学生が在館しているか把握が難しいことになるので、21位時過ぎの入館は制限することとしました。今のところ大きな問題は起こっていませんが、夜間、学内に人が少ない時間帯で、何か問題が起これば、将来的に閉館時間の短縮が必要となることもあり得ます。より自由を得るには、自由を活用し、問題を起こさないよう努めることが前提となります。
また、日曜祝日の入館については、事前に教員から入館願の申請を行うことになっています。例えば、地震や火災等が発生した場合、学生の安全確保・安全確認が必要となり、館内に学生が残っているかどうかわからないと困ります。そういった理由で、学生のCUBE閉館時の入館については、事前申請が必要となります。
開学当時、整備されたパティオには初代学部長が寄贈したさくら「ドラゴン桜」があります。これはCUBEの未来を100年に亘って見守る桜の木になります。その後、藤棚が追加され、現在の様な形に整備されました。
パティオでは球技等が禁止されています。パティオのすぐ横には線路があり、仮にボールが線路に飛び込んだりフリスビーが車体にぶつかるようなことがあれば、阪急電鉄、乗客の皆さんに多大な迷惑をかけることになります。もしかしたら、賠償を含め経済的・社会的な問題となるかもしれません。
また、パティオには喫煙ブースがあり、館内はもちろん禁煙となっています。さらに、西宮市では「歩きたばこ」は禁止されています。当然、道路へのポイ捨てもないということです。学生は、大学・学部のルールを守るだけではなく、社会・地域のルール、市民としてのマナーを守ることが当然のこととなります。
新1年生は、4月に授業が始まると、毎週7名程度ずつ、「学部長とケーキの日」の招待があり、初代学部長がケーキを用意し招待された学生と会話をする時間を持ちました。
高校あるいは一般の大学では、学生と教師の距離が離れており、学部長と新入生が近くで会話をする機会などがありませんでした。
よい教育の前提は、信頼関係であり、お互いがどういう人でどんな考え方をする人なのか、知ることが大事なこととなります。CUBEの特徴は、学生と教職員の距離が近いことであり、学生の成長を身近で見守るため、学部長自ら学生を知る機会を多く作り、学生との距離を縮める努力が必要と考えました。
1年次の中心的な授業が基礎リテラシーになります。基礎リテラシーは、ハリーポッター4つの寮をモデルに、クラスを4つに分けています。クラス分けは「組み分け帽子」が行い、クラスごとに教室があり、椅子の色が異なっています。基礎リテラシーの後半は学部長から2つのテーマが与えられ、各クラスからテーマごとに代表チームが選ばれます。
学年末に、テーマごとの各クラスの代表による最終プレゼンテーションがあり、最優秀に選ばれたチームメンバーは、宝塚ホテルでの夕食会に招待されます。事前にドレスコードが示され、夕食会当日は、理事長や学長にも参加いただき、マナー講座から始まり、その後、フランス料理のフルコースを楽しむことになります。学部長が十数万円の負担をすることになりますが、頑張った学生に特別な機会もうけて、CUBEで記憶に残る忘れられない一日を提供することになります。
CUBEの学生はネームカードを身に着けることとなります。ネームカードはIT企業等では一般的で、ソフトバンクでは、その色の違いで、社員の所属先がわかるように作られています。
CUBEの建物は閉鎖的な空間であり、夜遅くまで多くの学生が滞在しているので、不特定多数の外部者がいると、様々な問題が起こることが懸念されました。ネームカードを身に着け、入り口で守衛さんが入館をチェックすることで、館内の安全・安心が確保されることになります。
また、ネームカードは学年により色が異なり、見た瞬間に、同学年であるか先輩であるのかがわかるようになっています。特に、プロジェクト(ゼミ)は、学年を越えて履修者がいるので、一目で学年が認知できるようになっています。
CUBEでは、学生の成長を支援するため、今までの大学にはない新たな活動・イベントを幾つも用意しました。その一つが「社長かばん持ち」です。社長かばん持ちでは、一日、会社社長に同行し、社内の会議を傍聴させていただき、社外の活動に同行させていただくことで、社長の仕事ぶりまた行動・発言を身近で体感することによって、会社の仕組みや社長の役割、ものの考え方等多くのことを学ぶ機会が提供されることになります。
卒業生を中心に、何人もの社長に受け入れをお願いしました。例えば、アウディジャパンの大西社長、株式会社CHINTAIの佐藤社長、ディーエスピーリサーチの大西社長、SRSホールディングス(「和食さと、長次郎、宮本むなし等外食チェーン)の重里社長等多くの方々にお世話になり、学生は貴重な一日を体験することになりました。
初代学部長の佐藤はコロンビア大学ビジネススクール通信情報研究所CITIの日本代表でもあり、初代学部長の推薦により、何人ものCUBE生がコロンビア大学でのインターンシップに参加することになりました。コロンビア大学CITIは、毎年世界各国から多くの学生をインターンシップで受け入れています。
1期生3名は、世界トップクラスの大学であるコロンビア大学で1ヵ月に亘るインターンシップに参加しました(宿泊費はCITIが負担)。英語がある程度できることが前提で、インターンシップの内容としてはリサーチアシスタントとして与えられた課題に対して調査し報告書を英語で作成することになります。
その後、4期生で同じく1名、7期生2名が、コロンビア大学にてインターンシップに参加しています。また、7期生は米国並びにカナダに留学していた学生が、留学が終了する最後の1ヵ月NYCで過ごし、初めの2週間をKDDIアメリカの真鍋社長に、後半の2週間をコロンビア大学CITIにて、インターンシップ生として研修させていただくことになりました。これらは、大学上位高でも提供できない極めて貴重な体験となったようです。