HOME > CUBE創設を支えた人たち > 稲岡 猛
正直なところ、最初の反応は良くありませんでした。進路指導や担任の先生が興味あるのは、やはり実績の部分。就職はどうか、OB・OG訪問はどうするのかと聞かれました。
当然ながら実績と言えるものはまだありませんから、こちらが伝えられるのはCUBEのポリシーとか夢の部分。佐藤を見習って、パッションで勝負するしかありませんでした。ただ、不思議なものでこちらがワクワクしながら話していると、相手にもそのワクワクが伝わっていくのですね。
そのうちに「じゃ、生徒にも話してみようか」と言ってくださったりと、徐々に反応が返ってくるようになりました。
たとえば、ガラス張りの教室。CUBEの教室はほとんどがガラス張りですが、これは先生にとっても緊張感があるそうです。教員同士で良い授業を見学するという活動もありますが、基本的には1つの教室に1人の先生が普通です。
そんななかで、同じ立場である教員から「見られている」という緊張感は、授業のクオリティを上げることにもつながります。
さらに、1年次の基礎リテラシー授業では、1年生を4クラスに分け、各クラスでチームティーチングという形で、複数教員が同じ教室で協力しながら、クラス単位の授業を行っています。これもCUBEらしい新しい教育スタイルです。
もちろん、学生にとっても意味は大きいです。夜遅くまで頑張っている時も誰かに見守られている感覚があったり、そんな友だちの様子に刺激をうけて自分も頑張ろうと思えたり。
それは、教員にとっても同じことなのです。活気のある授業とそうでない授業というのはすぐに分かるものですから、もっと頑張ろうという気持ちが生まれるのだと思います。
そういった話は高校の先生方にも実感していただけたので、CUBEの授業スタイルに興味が湧いたようでした。
保護者の方々は、一般的な大学の授業スタイルや社会で必要とされる能力について知っているので、CUBEの取り組みの新しさも感じていただけました。たとえば、社会に出たら議論できる力って必要だよねとか、英語がもっと話せたら良かったのにとか。
それでも、なかには「就職のことを考えたら、実績のある既存学部が有利だろう」という意見もあったし、CUBEファンの受験生が「説得してください」と親御さんを連れて来られたこともありました。 反応はさまざまでしたが、CUBEの教育スタイルが多くの学生や保護者に受け入れられたのは、めざしていた方向が求められていたことだからだと思っています。
そうですね。でも、それを何とか形にしていくプロセスは、自分にとってものすごく勉強になりました。たとえば、学内での交渉事もそのひとつ。自分たちは「こんなにいいアイデアなのに」と思っていても、「どうしてもやりたいんです」と訴えるだけでは通らないですよね。組織のなかで、どうやって他部署の人たちも巻き込んでいくか。
どの部署にもそれぞれの正義がある訳ですから、そこをいかに調整していくか、ということを学ばせてもらいました。
今は人事課に配属されていますが、現場を知っているということは強みになります。要望を受け入れられない時でも、断る際に「私も経験したことがあるから、言っていることはわかるよ。でもね」と話し、理解を得られたことがありました。
非常にありがたい経験をさせてもらったと思っています。特に、佐藤と石野はものすごい突進力がありますから(笑)、多くを学ばせてもらいました。正直いうと、私はもう少し順序立てて進めたいタイプでしたが、事を成すためにはそれではだめな時もあるんだなと。どんなふうに進めていても心配事は尽きないですし、後に引けない場面にならないと動けないこともあります。
それに、上司が腹をくくっているという雰囲気。どんなことが起こっても骨は拾ってやる、だから一緒にやるぞ、という信頼関係があったからこそできたのだと思います。
でも何より嬉しいのは、それが最終的には形になって、学生のためになっていくことでした。
CUBEでは本当に多くの体験ができるので、学生たちはそれをしっかりと吸収してくれています。
英語の授業も、ただ話せるのではなく何を語るかが大切。極端にいえば、片言の英語であっても日本の文化や歴史について語れるほうが外国人にとっては魅力的かもしれません。もちろん、CUBE生たちは英語力も身につけていますが、語れる何かをどれだけたくさん蓄積できるかという点で誇れると思います。
一回生の最後に、プレゼン大会を勝ち抜いたグループは学部長主催のディナーに招待されるというプログラムがあったのですが、これはご褒美であると同時に貴重な学びでもあるんです。だから、お皿の回りにできるだけ多くのシルバーが並んでいるコースを選び、ホテルの方にテーブルマナーのレクチャーをお願いしました。学生たちは、正装し、いつもは接することのない理事長や学外の方々と会話をしながら、晩餐会の経験をすることができました。
確かにそうですね(笑)。社会で活躍されている方によく来校いただいたのですが、臆せず質問できる学生がたくさんいました。
一歩前に出られる、リスクを取れるというのは大切なこと。社会に出れば、守るべきものが増えてなかなか言いたいことも言えなくなる。学生のうちはまだ許される部分もありますから、学生の時から一歩前に出られなかったらだめだと思うんです。仕事をするなかで、何か勝負をかけないといけない時。そんな時に前に出る勇気があるかどうかは大切だと思います。
大抵は怒ったり注意したり、ということの方が多かったような。
それでも、人事異動となりCUBEでの勤務最後の日には学生たちがサプライズパーティを開いてくれたのです。大きな模造紙に寄せ書きしてくれて、5階の大きなプロジェクターにビデオメッセージを流してくれて・・・。その時にもらったプレゼントは今でも大切な宝物。そんな粋なことをしてもらうと嬉しいですよね。