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CUBE創設を支えた人たち

CUBEの一番のちからは、人間力あふれる学生を教育できること。大学職員:緒方 正樹。CUBE在任期間:2008年6月~2011年4月

「前例がないからできない」は言わないでおこう、が合い言葉に。

Q.
CUBEは、教育コンセプトも仕組みも今までにないスタイルです。大学事務室で経験の長い緒方さんにとって、抵抗はありませんでしたか?
緒方

正直、最初はありましたね。古株の管理職ですし、どちらかといえば、安全に行きたいタイプでしたから(笑)。ただ、CUBEの開設準備室に来てからは、考え方ががらっと変わりました。
以前なら「危なそうだからもう少し検討しよう」とストップをかけていたのが、「まぁ、冒険してみようか」と。

その度に、周囲からはいろいろな反対意見も出ましたが、「学生にとって一番ベストな答えは何か」を判断基準にすれば、最終的には答えはひとつしかありませんよね。それに、大学本部と離れた場所にあるので求められる機能も違うし、授業の進め方もまったく異なるので、既存の仕組みではフォローできないのも当然なことです。

Q.
たとえば、どんな部分が違うのですか?
緒方

学生サポートの面でいうと、ほとんどの業務をここで完結できるような仕組みが必要でした。入試対応や学生サポート、就職活動のフォローなど。僕たちとしては、本部に劣らないようなワンストップサービスをしようと。そのためのルールづくりを一つひとつ作っていったのです。

たとえば、昼休みの時間が決められていないのもひとつ。広さという物理的な問題もありましたが、全員が同じ時間帯に昼食をとることがほんとうに必要なのかと。各自がカリキュラムに合わせて都合のよい時間に食事をとればいい訳で、食べる場所も空いている教室は使えばいいし、外の景色を眺められるカウンタースペースもある。そんなふうに、一つひとつのことを本当に必要なのか?学生にとって一番よい方法は何か?をみんなが真剣に考えていました。

Q.
キャンパスのあり方、学校の仕組み自体を最初から考え直したということでしょうか?
緒方

そうですね。そういった基本的な部分は、佐藤学部長と石野さんが中心となって作り上げたものです。僕が参加したのは、準備室が立ちあがって一年ほど経った頃でしたから、最初のゼロからのスタートはさらに大変な道のりだったと思います。

新しいルールといえば、象徴的な例は先生の呼び方ですね。通常の大学なら、職員は「○○先生」と呼びますが、そうでなくて「○○さん」と呼ぶようにと。佐藤学部長に対しても、僕は今でも「佐藤さん」と呼びます。これは、一般的には絶対にあり得ないことですよ。

Q.
なるほど。あくまでも、主役は学生だということですね。
緒方

学生が夜の11時までキャンパスを使っていい、というルールができたことも画期的でした。当初は9時までだったのですが、学生から「もっと勉強したい」「宿題をする場所がほしい」という声が上がって、終電に間に合う11時まで延長することになりました。
当然ながら反対意見もありましたが、学生が勉強したいと言っているのですから、学校としてできるだけ要望に応えてあげようとなったのです。

その代わりに、セキュリティ面の仕組みはしっかりとしています。夜になると外からの入館はできないとか、ガラス張りの部屋しか使えないとか、安全面を考えていろいろな調整を行いました。そういった面では、本部事務室にもいろいろと協力してもらいました。

学生との距離が近い、その意味とは?

Q.
先ほどの「学生が一番」という考え方について、聞かせてください。
緒方

甲南大学には、Student First(学生第一主義)という考え方があります。これは、創立者である平生釟三郎の教育精神の一つで、迷ったときには学生にとって一番よい方法を考えようと。CUBE立ち上げの時にも、その精神がベースになっていたと思います。

それから、佐藤学部長が掲げている「教育で、日本を変えたい。学生たちの未来を変えたい」という強い想いがあって、私たちも同じ方向をむいて走っていました。
きっと、学生たちにもそんな空気は伝わっていたでしょうし、特に一期生たちはルールづくりにも積極的に参加してくれました。

Q.
学生たちにも、自分たちで新しい学校を創っていくという感覚があったのでしょうか?
緒方

そうですね、一期生たちが一緒に盛り上げてくれた。受験のときから、CUBEのコンセプトに共感して入学してくれた学生もいました。学部長のいう「CUBEは魔法学校です」という言葉に惹かれて、本当に魔法にかかったみたいにね。

僕自身、ずっと大学職員として勤めてきましたが、学生とここまで身近に接触したのはCUBEが初めてだったのです。通常であれば、事務的な手続きで言葉を交わす程度でしょうが、ここではいろいろな場面で濃い人間関係が存在します。僕はいま東京で勤務していますが、一期生で東京に就職した学生たちとは今でもお酒を飲みにいく間柄。それが何よりも嬉しいですね。

Q.
CUBEの人間関係は、他とはかなり違うようですね。
緒方
他の大学のことはよく分かりませんが、CUBEでは、みんながこのキャンパスの中で暮らしている家族のような感覚があります。教員も学生も職員も、立場は違っても、家族のような繋がりがある。1年生と4年生も普通に話しています。それは、授業だからとか必要だから、といった動機ではなくて、もっと深い部分で信頼関係ができているという感じかな。

CUBEの一番は、魅力ある人材の教育です。

Q.
最初の入試にむけて、高校訪問にも回られたそうですね。
緒方

佐藤学部長がね、高校生の前でスピーチをするたびに、CUBEファンが増えていくんですよ。
「CUBEは魔法学校です」とかどんどん言っちゃう(笑)。でも、「未来は自分で変えられるんだ」という言葉に、高校生たちは目を輝かせてましたね。特に、お母さん方にすごく受けていました。

Q.
高校訪問でファンが生まれるというのは、めずらしいことでは?
緒方

普通はないと思います。でもね、プレゼンが上手い佐藤さんでも、笑わそうとしてすべるときもあるんですよ。そんな時に慌てた様子を後ろから見るのも、ちょっと楽しかったですよ(笑)。
しかし、佐藤さんのすごいところは、そこからどんどん工夫して、さらに磨きがかかっていくところ。聞いてみると、スピーチの構成を見直して、自分で話す練習をしていると言うんです。落語の構成を研究したりしてね。僕には絶対にマネできない、すごい人だなと感心しました。
それだけ成し遂げたいという想いが強いのでしょうね。

Q.
強い信念があるということですね。
緒方

高校訪問だけでも、佐藤さんは数ヵ月の間に70校くらい訪問されていました。普通の先生は嫌がるんです。高校側にとっては、夏休みの大切な時期ということもあり、丁寧に対応してもらえないケースが多いので、大学の先生はあまり行きたがらないんです。

しかし、CUBEの一番は、研究ではなく教育ですから。大学教員こそ高校の先生とじっくり話し合うべきだと思います。学生を受け継ぐという意味でも、高校教育の現場に行って、そこの課題をちゃんと理解しておく方がいいのです。

10年後、CUBEの卒業生に会うことが楽しみ。

Q.
今でも卒業生と交流があるそうですが、1年生の時と比べて成長を感じますか?
緒方
それはもう、ずいぶんと成長しましたよ。一期生の学生たちは、受験生の頃から知っていますから、CUBEに入ってからの変化と、卒業してからもさらに成長しているので、そんな様子を見ていると嬉しいですよね。彼らが10年後にどうなっているのか楽しみです。
Q.
CUBEで勤務された約3年間で、一番の思い出は?
緒方
やはり、学生たちと一緒に過ごした時間かな。彼らの成長をそばで見ることができて、とてもいい信頼関係を築くことができた。これはCUBEでしかできなかったことです。そういう意味で、僕は幸せだったと思っています。
Q.
今後も引き継いでいってほしいと思う、CUBEの良いところは?
緒方
CUBEはずっと魔法学校であり続けてほしいですね。学生たちがいきいきしていて、プロジェクト学習やインターンシップなどを通して自分から動いている。もちろん、教員も職員も自ら動く。開設準備から関わった人間として、これからのCUBEが心配でもあり楽しみでもあります。
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