モンゴルの経済と文化に興味がありました。一つは、地下資源によって経済が上向いているモンゴルの現状を見てみたかったのと、授業でモンゴルのことを学んでからその宗教観や自然観、世界観に魅かれていたので、機会があればぜひ行ってみたいと思っていたんです。
現在、モンゴルは経済発展が著しく将来の展望は明るいと思います。僕たちの世代は好景気というものを知らないし、新聞やニュースでも不景気を伝える暗い話が多い。だから、発展している国の勢いを肌で感じてみたいという思いもありました。
最初に驚いたのは、タクシーを覆う砂埃。空港から中心部までの道が舗装されていないためですが、自分が中東の国に来たのではないかと思うほどでした。草原の風景をイメージしていたので、全然印象が違うなぁと(笑)。
街中では人々の助け合いの精神というか、人を思いやるようなシーンをよく目にして、とても心地良かったです。例えば、工事中の道路を歩くときには、自然と男性が女性や高齢者に手を差し伸べていました。日本ではあまり見られない光景ですよね。
その一方で、建設ラッシュがめまぐるしく、そのスピーディーな変化に人々がついていけていないのか、都会生活にあまりなじめていない印象もありました。遊牧民は自然の流れを読んで生活をするという部分があるからかもしれません。
「計画しない国民性」には戸惑いました(笑)。例えば、急に「明日、日帰り旅行へ行こう」と誘ってくれるのですが「何時にどこで集合?」と聞くと「なんで今、計画するの??」という感じで不思議そうな顔をされるんです。結局、次の日には気分が変わって予定が流れるということが多かったです(笑)。
都市経済学を勉強しているので、休暇中に地方都市に小旅行をしようと思っていたのですが、その国民性のおかげでなかなか実現できませんでした(笑)
でも、計画しないのは、彼らが日々お気楽に過ごしているからではなく、遊牧民としての性質上、その日にできることをやるという考えからきているようです。ウランバートルは、自分で地図を片手に歩き周りました。
たくさんのコミュニティを訪れて、ニュースでは描かれることのないモンゴルの現実を見ることができました。キリル文字が読めないとバスの運行表も分からないので、結局歩くことになったのですが、そのおかげで首都の隅々まで歩きまわることができました。そうした経験は、インターンシップでマーケティングを計画するときに、とても役立ちました。
の5つです。これらのことを2ヵ月弱で達成しなければならずハードでした。
そのようですね。なぜNGOのマーケティング分野でインターンができたのかと、よく質問されました。ディレクターから聞いたのは、スタッフが各プロジェクトを受け持っていて全員が仕事に忙殺されている状態なので、組織運営にほとんど力が注がれておらず、組織のブランディングをサポートする人材が必要だったのだそうです。マーケティング分野での活躍が重宝され、本来は予定していなかった「10days of activism」という活動のサポートもしました。
プロモーションプランの作成と、スポンサー探しです。しかし、スポンサー探しは難しかったです。モンゴルの経済成長も減速気味だったことと、なによりも6月の選挙で法改正があり、企業全体が新しい法律に適応するために時間がなかったことが大きく影響しました。
プロモーションプラン作成に関しては、モンゴル国内でのInternational Planned Parenthood Federation (IPPF)とMFWAの認知度に着目したのですが、その低さに愕然としました。ほぼ誰も知らないと言ってもいいような状態で、オフィスの裏に住んでいる人でさえ、聞いても知らなかったのには驚きました。実際、初めて訪れるときに、30分の道のりに2時間程度かかってしまいました。「これはMFWAの存在を広く浸透させる必要がある!」と奮起しました。
また、9月1日から10日まではY-PEER(Youth Peer Education Network)という団体が活動する、世界同時開催「10days of activism」という運動があり、この参加にあたってマーケティングとメディア面について、僕も急遽手伝うことになりました。
これは、若者の意見や権利の尊重を唱え、特にSRHR(性と生殖に関する健康と権利)関連問題への啓発と政府への働きかけを目的とした活動で、モンゴルではSRHR関連の絵をマンホールに描くというキャンペーンを行いました。
このような活動を政府以外で行ったのは、モンゴルでは初めてのことで反響も大きく、国内のメディアはもちろん、ドイツの新聞にも載ったそうです。僕個人としては、同世代の大学生と一緒に活動できたこともとても良い経験でした。
見知らぬ国で初めての組織に属して働くインターンシップは、戸惑いも大きかったのですが、今までCUBEで学んだことや、4年間いろいろと経験したことを総動員する機会となったので、非常に収穫のある体験だったと思っています。大学生活の集大成という形にもなり、新たな自信にもつながったように感じています。
モンゴルに行く前は地下資源を輸出できる国の将来は明るいとばかり思っていましたが、実際はそうでもないことがわかりました。資源開発は外資に頼っている部分が多く、利益は国外にもたらされるし、GDPやGNIが上がって好景気になってもそれ以上にインフレ率が高いので、普通に暮らしている人はほとんど恩恵を受けていないそうです。特に、モンゴル人は毎食のように肉を食べるので、肉の価格上昇は家計の負担になってつらいと、口々に話していました。
外から見るのと実際に行って知るのとでは、大きく違うということがわかったのは良い経験になりました。
また、窓を開けると砂埃が入ってきてパソコンが砂まみれになるとか、ケーブル式の不定期的につながらなくなるネット環境や、仕事中にしょっちゅう停電するなど、日本では考えられない職場環境に慣れるのも、最初は大変でした。
参加するまでは、漠然と国際協力や発展途上国で働くってかっこいいというイメージしか持っていませんでした。けれども、僕が直面した現実はそんな期待を破壊し、自分がどのように生き、何をしたいかをより現実的に考えるようになりました。
そうです。最初に滞在していたゲストハウスで出会ったさまざまな国籍や経歴を持った人たち、仕事を通じて出会ったモンゴル人のバックグランドに触れて、世界ではこれだけたくさんの働き方があるということを知り、日本の状況だけを考えて日々を過ごしていてはいけないと思いました。
それから、日本社会での常識や当たり前がどれだけ偏っているのかを実感しました。日本やアメリカを中心に考えるのではなく、もっと幅広い視点から現在の社会を見なければいけないと思いました。