大阪心斎橋にある大手ファミリーレストラン。その前で、僕は大きく深呼吸していた。今から、自分が先頭に立って「エコバシ」を売り込みに行くのだ。
事前のアポは取らない。話すのは僕の役目で、社長は無言で後ろに付いているだけ。もちろん僕がインターンシップの学生であることなど相手は知るはずもない。
こんな立派なお店に僕なんかが行って、後々問題になったらどうしよう・・・。しかし、今さら引き返せない、覚悟を決めて店内に入る。
店長さんは戸惑った様子だったが、少しだけなら話を聞いてくれることになった。僕は今日のために作ってもらった名刺を差し出し、エコバシが地球環境に配慮した割り箸で、箸袋が広告になることを必死で説明した。
しかし、店長さんにはどのくらい伝わったのだろう・・・?自分の頭のなかでは、エコバシのポリシーがいかに素晴らしいか、利益追求だけでなく大きな視野で動いているかを理解しているつもりだが、相手にそれを伝えるのはとても難しい!
それからも商店街を何時間も歩き回り、いろいろな店にアタックした。あっさり断られたりもしながら、営業の難しさと、伝えるための工夫が必要であることを実感した。
実は将来、起業したいという夢がある。そういった意味でも、今回二人の社長にお会いできるのがすごく楽しみだった。
1日目のディーエスピーリサーチの中西社長は、とにかくスケールの大きい方だった。朝から同行させてもらったのは、神戸市役所との会議。話題は会社単体のことではなく、兵庫県全体の将来に関わる内容だった。僕はただ話を聞いているしかなかったが、中西社長の熱意に感動してしまった。
会社の経営のこと、社員の労働環境のこと、そして社会全体のこと・・・。経営者というのは、常に考えることが山ほどあるのだなと思った。精神的にも身体的にもハードなはずなのに、社長はとても楽しそうなのだ。
エコバシの上辻社長は、起業して5年目。年齢もまだ若い。ずっと起業したいという想いがあってエコバシのアイデアを思い立ち、最初は一人で営業もやりながら少しずつ取引先を増やしてこられたそうだ。これから会社を育てていくという夢と情熱が伝わってくる。
上辻社長いわく、起業自体はそんなに難しいことではない。最も重要なのはアイデアで、そのためには常に情報収集のアンテナをはっておくことだと教えてもらった。僕にはまだ具体的なアイデアがないが、CUBEでの基礎リテラシーという授業で、いつも日本の経済状況についていろんな角度から調べたり議論している。そういう視点を大切にしていれば、ビジネスのヒントが見えてくるかもしれない・・・。
また、お二人を見ていてリーダーシップの重要性も確信した。どちらの会社も社内の雰囲気がとてもよい。社長自身も楽しそうだが、社員の方たちも仕事を楽しんでいることがよく分かった。自分も将来会社を作るなら、みんなが楽しんで働ける環境をつくりたい。そのためには、社員一人ひとりの得意な部分を見つけて、それぞれが力を発揮できるように配慮しなければいけないと思う。
それにしても、この2日間の体験を通して、自分のなかで「起業」というとても難しく遠い夢だったものが、少し近くなったような気がする。今から必死で努力することで、いつか実現可能な夢の範囲内に入ってきたように思った。