大学に入学したときから、「今までに経験したことのない、新しいことに挑戦しよう」と漠然とした目標を持っていました。しかし、具体的に何から行動を起こせばよいのか分かりませんでした。また、CUBEには国内外での様々なフィールドワークがあり、私自身がどれに参加したいのか、なかなか決められずにいました。そのときに出会ったのがこのブータンでのフィールドワークです。それまでブータンに関する知識は全くありませんでしたが、ブータンへ実際に足を運び、学びを得られることは、まさに目標に掲げた「経験したことのない、新しいことへの挑戦」であり、迷いや不安の気持ち以上に「とにかく行ってみたい!」という思いから直感的に参加を決めました。
フィールドワークは約10日間(2019年8月3日〜15日)ほどあり、前後3日間は移動をしながらさまざまな場所を訪ね、地元の方たちと交流し、間の4日間はブータン中東部にあるブムタン県シンカル村で、ホームステイを体験しました。ホームステイを通して、ブータンでの暮らしや文化について、より近くで体験し、学ぶことができました。乳製品加工工場でシンカル村の人々の収入源であるチーズやバター作りを体験したり、村中を歩いて自然を感じたり、ひとつの家に集まってみんなでご飯を食べたりなど、日本では味わうことのできない貴重な体験ばかりでした。さらに、シンカル村はチベット仏教において重要な場所と言われており、宗教的な面でも彼らの考え方、価値観にふれる中で考えさせられることが多くありました。さらに、私たちが普段授業で学んでいる経営の知識やSDGsについて、村の人たちにプレゼンテーション形式で発表する機会もあり、双方にとって多様な学びを得られる機会となりました。
そして、このフィールドワーク最大の特徴は、「JICA(国際協力機構)草の根技術協力事業」が行われている地で、実際に国際協力の現場を見られるところにあります。私はJICA事業の学生スタッフとしてもフィールドワークに参加し、シンカル村でどのような活動をしてきたのか、そこから何を学び、何を感じたのかについて、JICAブータン事務所で報告しました。
このフィールドワークを体験する中で感じた苦労は決して少なくありません。特に苦労したのは、村での体験を人前で発表するために、短い時間で準備をしなければならなかったことです。普段の授業では、プレゼンテーションのために数週間ほど時間をかけて準備しますが、ここでは街に住むシンカル村出身の方に向けて、これまでの体験や学んだことの発表を、約2日間で準備する必要がありました。話す内容や構成を考えたり、学生それぞれが感じたことを言葉にしてまとめたり、短い時間の中で満足のいく発表をするのは非常に難しく大変でした。
フィールドワークに参加して感じた学びは、「自分で経験できることの大切さ」、そして「物事を多角的に捉えられる視点」です。私たちは今、スマホ1台で様々な情報を知ることができる、とても便利な時代に生きています。ですが、やはり自分の目で見て、肌で感じて経験したことは、他のどんな情報よりも正確で、印象的なものばかりでした。ブータンの文化や生活はもちろん、彼らの価値観を知ったことで、性別や国籍問わず、人にはそれぞれ多様な考えや捉え方があり、それらを理解し合う必要性について改めて考えるきっかけになりました。文化や言語といった垣根を超え、ブータン人の人間性を少し知ることができた気がします。また、大学で学んだ知識を実地で使ってみる(プレゼンテーションをし、意見交換を行う)ことで、より深く身に付けることができました。
そして、これまでの貴重な経験は、思い出として留めておくのではなく、たくさんの人に発信していきたいと考えています。他大学との交流会や専門家の方の前での報告会など、既に何度か発表する機会がありましたが、これからもたくさんの場所で私たちの経験を発表し、フィールドワークについて、ブータンについて、何か少しでも考えてもらうきっかけになれば嬉しいです。
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