インフルエンザも乗り越えて,5月もどうにか乗り切れそうです,新井康平です。
前回は,プロジェクト形式の講義をほとんど経験していないのに,したり顔で,CUBEの学びの特徴であるプロジェクト学習について語っていました。まとめると,プロジェクト学習の特徴は,
1. レクチャー形式で学んだ諸理論を現実に当てはめて考える訓練に最適である
2. そのためには,少人数講義,幅広い専門からなる教員集団,優れたIT環境が不可欠である
というものでした。
今回は,より具体的にプロジェクト型学習の事例を紹介しましょう。というのも,本日水曜日に,1年生対象のフレッシュマンセミナーにて(学部生も私も)はじめてプロジェクト型といわれる講義を180分間(大学では,1時間90分なので2時間です)通しで実施したからです。ただ,学部1年生ですから,問題解決の方法についても,まだそれほど委譲しているわけではなく,かなりこちらで準備をしていた部分もあるのですが,今後のプロジェクト型の講義に慣れてもらう上でも,よい経験になってくれたのではないかと考えています。今後は,問題解決プロセスについて,徐々に教員からのアドバイスは減少し,より自分たちで問題を解決することが必要とされます。さらには,最終的には,問題を設定するプロセスすら,学生達に委譲されることが期待されています。
プロジェクト型学習の特徴は,学ぶべき体系があるというよりは「まず問いがそこにある」というものでした。今回,学生の皆さんに解決していただく問いは「同じ機能の商品なのに価格が違うのは何故なのか」という問いです。でも,これではあまりに大きな問いですので,特にレンズ付きフィルム(昔は使い捨てカメラと呼ばれていました)についてこの問いを考えてみるというセッションでした。
A社製のレンズ付きフィルムは,200円で売られています。かたやB社製のレンズ付きフィルムは,500円でした。同じ27枚取りでフラッシュ付きなのに,なぜここまで価格が異なるのでしょうか?この問いの最も直感的な答えは「原価が違う!」というものでしょう。でも,本当に原価が違うんでしょうか?そこで学生の皆さんには,「リバースエンジニアリング」あるいは「ティアダウン」という方法で,これらを検証してみてもらいました。
リバースエンジニアリング,あるいはティアダウンは,簡潔に言うと対象製品をバラバラにして構成部品などから材料費や組み立てに必要な諸経費を推定するものです。学生の皆さんは包装してある袋を開封する時点から,「接着の方法が違うのでは」,「包装している素材が違うのでは」,「包装用紙に用いられている色の数が」・・・,という風に慎重に解体作業をしてもらいました。
結局,3-4人の3チームそれぞれが,原価の決定的な差異を発生させる要因を特定できたようです。来週は,各チームで原価の差異となる要因がどのようなものだったのかをプレゼンテーションし,さらには他チームと議論するという時間がありますので,非常に楽しみにしています。特に,原価と品質のトレードオフ(あちらが立たすとこちらが立たずという関係)が,具体的にどのような部品と機能でみられたのか,全てのチームが意識できていたようです。
このようにプロジェクト型学習では,ある問いに対して答えを得るために,具体的な作業(今回のような解体作業だけではなく,フィールド調査,アンケート調査,統計調査,あるいは文献調査など)が必要とされます。また,マネジメントにおいては優れた理論は役に立つものであるので,レクチャーで学んだ理論を基礎に作業を進めることも必要です。このように,答えを覚えるのではなく,答えを見つけるための方法を身につける,という目標が達成できるのが,CUBEでの学びの特徴といえるのではないでしょうか。今後は,今回のように180分で終わるプロジェクトではなく,より大きな問いを,より多くの作業で解決するためのプロジェクト型講義が学生には用意されています。徐々にではありますが,着実に問題解決能力を進歩している学生たちをみると,開学前には少し難しすぎるのではと危惧していたカリキュラムも,今ではもう少し難易度を上げなくちゃと考えるほどになっています。CUBEでは,ハードなトレーニングとそれに応じた僅かですが確実な成長が,そこかしこでみられるんだと感じた2ヶ月間でした。
P.S.
レンズ付きフィルムの解体作業は,感電の恐れがあり危険です!このエントリーを見ている良い子の受験生たちは,安易に真似しちゃ駄目だZE!
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