英語、留学を志望する高校生に向けて(広渡潔教授)

英語、留学を志望する高校生に向けて(広渡潔教授)
英語、留学を志望する高校生に向けて(広渡潔教授)
CUBE DIARY

英語、留学を志望する高校生に向けて(広渡潔教授)

2012.09.03

今年4月からCUBEで働き始めましたが、それ以前は大手銀行で主に国際金融に携わり50歳で退職、その後ビジネスから足を洗い英国の大学院で歴史を勉強しました。こうした経験からおそらく同世代では比較的英語というものに長く深く接してきたほうで、それでもいまだに英語で苦労しています。

http://www.konan-u.ac.jp/faculty/cube/professor/hirowatari.html

CUBEでの特別留学というのは、北米の一流大学で現地学生と机を並べて約10ヶ月のアカデミック留学を行うもので、ユニークな制度でまさにCUBEの看板でもある「英語で学ぶ」の実践版でもあります。その一方で正直なところ10ヶ月、あるいは1年から2年現地にいても、社会的に通用する英語が簡単に身につくわけではありません。その後も継続的に不断に努力することが必要です。私の経験を踏まえていえば、こうした努力を行うにあたって、ひとつの重要な姿勢はまず量をこなすことです。

欧米の大学、大学院の学生に対する課題図書は非常に多く、講義、セミナーに関連する多量の書籍、論文に目を通すのは当たり前です。なぜ多くの文献を読まないといけないか。基礎的な知識が書いてある基本書を読めばいいではないか、という見方もあるかと思います。しかしここに実を言うと欧米と日本との教育の違いというものが色濃く出ています。要は欧米での教育、特に高等教育の基本はCritique、すなわち批評ないし批判です。単に知識を得る、あるいは何かを習うことではありません。批評を行うためにはまずその前提にこれまでどんな議論が行われてきたか理解する必要があります。それを踏まえたうえで、自分の見方、意見というのを構築するのが求められます。このプロセスを専門用語でLiterature Review、文献検索と言いますが、これがまず論文やエッセイを書く上での重要なスタートラインとなります。

いやあ、自分は専門の学者になるわけではないのでそこまでは、と思う人もいるかもしれません。しかし「量をこなす」ということは実は「英語で学ぶ」というCUBEの方針、あるいは皆さんの将来の実社会での仕事にも十分関わってきます。まず「英語で学ぶ」というのは英語の実践、活用を念頭に置いた考え方ですが、最近の学生全般についてみると会話力はなかなかですが、読解力が落ちています。要は文献をきっちり読んで理解する能力が落ちてきています。これを鍛えないことには、「英語で学ぶ」も早晩行き詰ります。英語には同じ言葉で複数の意味を持つ言葉が数多くあります。例えばargumentには論争という意味と意見という意味があります。文脈でどちらを意味するか、これは文章を読み慣れないと身につきません。また量をこなすことで英語特有の文章のスタイル、Collocation(言葉の組み合わせ方、例えばspeechという名詞にはどの動詞が適切なのか)が身につき、これがひいてはWriting, Speakingの能力向上にもFeedbackしていきます。

しかし「量をこなす」というのはそれだけにとどまらず実社会でも関係してきます。例えば金融機関に入り取引先企業を審査するにはその企業の財務諸表、その企業の属する業界の調査資料など膨大な資料に目を通しエッセンスを掴むことが求められます。しかもこうした能力をじっくりと育てることを社会は許してくれません。多くの企業では特に若いうちに大量の仕事をこなすことが求められます。もちろんそこに失敗もあります。しかしその本当の狙いは「量が質を作る」ということにあり、それを通じてしか人材は育たないのです。

「量をこなす」というのはある意味で「詰め込み教育」の復権です。現実の教育現場でも「ゆとり教育」の限界が指摘されつつあるのは皆さんもご承知のとおりです。CUBEで思い切ってみずからを「詰め込み教育」に放り込んでみませんか。勉強量に比例して着実に自分の資質が向上するのを実感してください。まさにスポーツの世界と同じように「練習は裏切らない」と思います。

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