マネジメントコース3年の井上啓です。
8月17日から20日にISFJ日本政策学生会議が主催する2012政策合宿に参加しました。通年で履修している倉本宜史先生のプロジェクトの一環としての参加でした。
ISFJ日本政策学生会議は、「学生の提言で未来を創ることを目指して活動する非営利政策シンクタンク」で、関東からは慶應、中央、早稲田、明治等、関西からは阪大、神大、同志社、関西学院等の政策をテーマとするゼミ生が参加しています。
合宿は「問題意識を持ち、現状を分析し、政策を立案して、その政策を提言するという一連のプロセスを体験する」をテーマに、3泊4日、朝の8時から夜の27時まで毎日グループに分かれて当日のテーマに関する政策を練ることが行われます。
ちなみに、「政策合宿で取り扱うテーマは事前にアナウンスされることはありません。あくまで政策立案のプロセスを体験することが目的であり、策定された政策の優劣を競うものではないからです。事前の知識によってコンテストに有利・不利が生じることはありませんし、もし自分の研究分野と合宿のテーマが異なっても自分の知見をフルに使えば、皆と同じ土俵に立てるはずです。」という前提で討議やコンテストは行われます。今年からは「政策を立案するからには洗練されたものを策定したい。実務家の方々に発表を行い議論したい」という声に応え、官僚をはじめとする実務家の方々によるコンサルティング・プレゼンテーションの場も設けられました。
私がこの合宿に参加した理由は、今までCUBEという狭い環境にいた自分が、他大学の、しかも自分よりも意識が高く、知識のある学生と交流することで刺激をもらえる、また刺激を与えられるいい機会だと思ったからです。参加する前から学力では明らかに勝てない学生とグループワーク、プレゼンを行うと聞いていました。考えるだけで胃が痛かったです。実際グループを組むと案の定、知識では勝てませんでした。例えば「補助金」の話。私の中で補助金は政府からしか財源がないと思っており、コストは政府が担うと解釈していました。しかし、同じメンバーの学生が「なになに税として徴収」「企業から税を徴収」など政府以外からも金を徴収できる、と簡単に意見を述べていました。無力でした。合宿中は随所で劣等感に浸っていました。しかし、何か勝てる部分はないかと考え、グループワークの「質」をより良いものにしようと取り組みました。私にはCUBEの授業でグループワーク何十回という経験があります。その経験から「グル―プワークでは意見を述べることだけが大切ではなく、周囲を見渡しながら、他者の意見を尊重し全員の意見をコミットしていくことが大切だ」と学んできました。それを実践でき、グループの成果に貢献できたので、結果、プレゼン大会では優勝することができたのではないかと考えています。
今回のテーマは「日本のエネルギー政策」でした。3日間、朝から晩まで政策を練る、グループで語り合う。体力的にも厳しく、声がかれました。エネルギー政策なんて難しいし、個人的な意見なんて伝わらない、考えたところで自分には縁遠い課題と考えていました。
ちなみに私たちのグループの政策は「安定かつ安全な供給体制の構築」というもので、火力、原子力の変わるにメタンハイドレート、バイオマスを有効活用しようと提言しました。2050年までに原発稼働率をゼロにする、また火力発電の負担を減らす。その結果安全かつ安定な供給を実施できるという考えでした。しかし、2010年エネルギーミックスの割合の約80%がこの二つで占められている。それをなくすと何で補うのか、という問題に直面します。そこで、日本に今後100年分の電力資源が埋蔵されているメタンハイドレート、林材や家庭、農家の廃棄物を原料とするバイオマス。この二つを代替として用いようと考えました。
この二つを有効に活用するのがまた大変です。政策の大きな壁として1.なぜメタンは普及していないのか、2.バイオマスのコストはどこから徴収するのか、という二つの問題点です。
1.に関しては100年分埋蔵されているのになぜ今普及していないのか。
2.に関しては林材を運搬、利用するのにコストは莫大にかかってくる、そのコストはどこから出るのか。
今まで、主にCUBEで学んでこなかったこれらの問題点にどうアプローチするのかということが私は最も苦労しました。それを改善するために甚大な量の論文、経産省のデータ、エネルギー庁のデータを調べました。今はあまり経産省を見たくないというくらいアクセスしました。
このような機会を持つことで、大学生として、日本の将来を担う世代として、現実問題として考えることができました。震災、津波をきっかけに、安全性、安定性の課題が露呈した原子力発電に対し、「危険だから」「リスクが大きいから」と稼働をするか否かを言うのは簡単です。しかし、稼働停止するならば何で補うのか。例えば「火力発電」ですが、石炭、石油は環境に悪影響を与えます。物事を政策的に考えるという経験は非常に貴重な経験でした。プレゼンの審査のゲストとして、経産省エネルギー庁の方に評価していただいたことは私の自信につながりました。
CUBEの枠から離れ、「日本の将来」について大学生なりに考えることができ、他大学の学生や実務家の方と交流もできました。また、他大学の学生に「グループワークが円滑に進んだのも啓さんのおかげです」と言われたり、発表の際のpower pointを作った際も「分かりやすい」と評価されたりと、自分が学外で評価されたことは嬉しかったです。合宿中に仲良くなったISFJの代表、役員の方と合宿後に話す機会がありました。そこで、「井上さんのグループが一番いい意味でも悪い意味でも盛り上がっていましたね。でもそこで結果を出せたということはグループワークの仕方に間違いはなかったのですね。」と評価してくれました。また、「私のグル―プの発表が最も現実的で実現可能性、代替案の合理性があった」と評価してもらいました。他学生との交流はこれほど楽しいのかと、刺激をもらえるのかと実感しました。今回の経験は、企業のインターンシップよりも多く学ぶ経験ができたと実感しています。
【ISFJ日本政策学生会議政策合宿2012】
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