受験生の皆さん,こんにちは。CUBEで会計学を担当しています新井康平です。
今日は,CUBEの特徴的な講義であるプロジェクトについて説明します。
プロジェクトってなんですか?という質問に答えるには,皆さんが考える普通の講義との違いを考えればよいでしょう。
プロジェクトと講義の違いは,
1.講義は知識を学ぶ/プロエジェクトは知識をもとに問題を解決する
2.講義では知識の習得度で評価される/プロジェクトでは問題に対するアプローチ方法で評価される
3.講義は体系化された知識を教える/プロジェクトでは問題を解決するために知識を自ら体系化する必要がある
といった感じでしょうか。すでに,詳細は議論してあるので,
http://www.konan-cube.com/system/diary/archives/933
を参照いただければと思います。
3年経っても,このあたりはぶれていないように思います。
では,4年生なども加わった本格的なプロジェクトの事例を紹介しましょう。
私が今担当しているのは,『会計学・経営学の未解決問題を解く!』というかなりチャレンジングな(無謀な)プロジェクトですが,すでに良い議論がなされています。
実際には,次の10の問題を取り使っています。
1「会計基準は世界共通であるべきか否か」
2「上場した方がよいか否か」
3「従業員の報酬は成果に応じたものが良いか否か」
4「新卒採用は学歴で選抜した方が良いか否か」
5「企業内恋愛/結婚は企業として制限した方が良いか否か」
6「従業員は多様な方が良いか均一な方が良いか」
7「将来のキャリアは,大学生のうちに確定させた方が良いか否か」
8「誰かがリーダーシップを発揮しなければまわらないような組織は,良いのか悪いのか」
9「予算は厳しく作ったほうが良いか否か」
10「同族企業は良いか否か」
プロジェクト中はこれらの問題をどのように扱っているでしょうか。
前回扱ったのは,テーマ5の「企業内恋愛/結婚は企業として制限したほうが良いか否か」でした。
この問題に対する事前資料(100ページくらいあります)を読んできて,当日はチームに分かれてケース分析をしたり,理論的な分析をして,企業が恋愛についてどのようなスタンスに立つべきかをチームごとにプレゼンしました。
結果は,
1.企業は恋愛について制限してはいけない:0チーム
2.企業は恋愛について条件づきで許容しなくてはいけない:4チーム
3.企業は恋愛を制限しなければならない:1チーム
という感じです。
まずは,1チームしかなかった3の理由は,論文などの検討の結果「場の理論」という議論を援用した上で,「恋愛問題による人間関係の悪化は,場のマネジメント上良くないよね」という結論に到達したものです。
つまり,恋愛については「別れたあと」のことを企業は考慮する必要があり,別れたあとの諸問題は企業にとってかなり致命的なので,そもそも社内恋愛を制限したほうが良い,という冷静な解釈ですね。
残りのチームも,「組織に合意書を提出する」,「周知の上,モニタリングを働かせる」といったようにモニタリングの必要性を強調していて,学生たちの冷静さにちょっと先生ビックリしました。
でも,これは興味深い問題です。
というのも全てのチームが,社内恋愛とセクシャルハラスメントを結び付けて議論し,そのリスクの統制から議論を組み立てていたからです。
プロジェクトでは,学生チームは根拠として実際のケース(実例)を探さなければなりません。
このように主張の根拠として使われたケースは,社内恋愛を許容する企業の事例ではなく,セクハラの事例がほとんどでした。
恋愛を許容する組織で本当にハラスメントが発生しやすいのか,という論点は,全てのチームでもう少し議論してほしかった内容ですが,それでも皆さんがそこを違和感なく議論を進めた点は興味深いものです。
このようなテーマは,本来なら経営学で議論すべきところ,多くの研究者がほったらかしていたテーマでもあります。
教えられた経営学を当然のものととらえず,「なぜ,・・・について経営学は教えてくれないのか」という視点は,CUBEのようなプロジェクト型学習にフィットした内容を提供するといえるでしょう。
おおよそ,プロジェクトは半日分消化しますが,このような経過で進みます。いかがですか?
しっかりとした理論と,現実のケースを組み合わせて議論をすすめるのは,思いの外,大変です。ただ,これらの方法が,遠回りのように見えて,しっかりとした理論的理解を深めているのも実感しています。これを読んでいる皆さんには,ぜひCUBE生になってもらって,日々の問題をしっかりとした理論や方法論で考える能力を伸ばして欲しいと考えます。
以上,CUBEのプロジェクトの紹介でした!
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