今回、CUBE2回生である小松、淺田、大坪、内海の4人で倉本先生引率のもと大自然に囲まれる三重県大台町観光協会主催の農業体験モニターツアーに参加させていただきました。
初日、辿りつくまで各々に現地へのイメージがあったと思うのですが、私は上手く想像が出来ませんでした。しかし到着間際の電車のディーゼルエンジン音を聞いた時や駅からの移動で草に囲まれたトンネルをくぐりぬける時に「一歩違う土地に来たのだな」と実感しました。
行く前から心配であった台風に伴う天候悪化により当初予定されていたモニターツアーの内容が行なえなくなってからも、町のみなさんのご協力により私達は盛りだくさんの体験をすることができました。
今回私達は、農業体験の指導員をしてくださった中村さんご夫妻のご自宅近くにある別宅を宿泊所として2日間お世話になりました。そこに荷物を置いて、一日目、まず私たちが向かったのは民宿「みくり」です。そこでは民宿を経営しておられる中江さんご夫妻の大歓迎を受けました。お昼ご飯の時間ということで、長旅で空腹の私達が頂いたものは、蕎麦粉から朝一に手打ちで準備をしてくださった蕎麦、綺麗な清流で取れた鮎の塩焼き、夏野菜ならではの漬物など現地のものでした。どれもまさに「新鮮そのもの」でした。そしてなにより私がお腹いっぱいになったのは、中江さんご夫妻の生き生きとした笑顔でした。
次に移動をし、陶芸体験をさせていただきました。なかなか難しく、個々にできた作品には個性が顕にでていました。「芸術にはやはりセンスというものがあるなぁ」、と感じました。
晩ご飯は中村さん(お父さん)が私達のためにお庭に手作りしてくださった雨対策用の屋根の下でいただきました。朝、到着したときに作ってくださっていた屋根が完成した姿を見た時はとても有り難く、嬉しかったです。初めて食べた牡丹(猪)と紅葉(鹿)のお肉はとてもおいしかったです。その夜は家族のみなさんと色んなお話をした事を覚えています。ほとんどが自給自足での生活で、モノに溢れている現代には考えられない努力と苦労が感じられました。田舎ならではの夫婦関係の絆やこれからの私達の将来や親への感謝の話は忘れられません。
私は、あの数時間だけでも沢山の貴重なものを得ました。
二日目、朝は鶏の鳴き声で目覚め、そのまま近くにある神仏がおられるという珍しいお寺(神仏習合の影響で神社とお寺が一緒になって今に伝わるお寺)で座禅をさせていただきました。初めての体験で、しかも早起きの為に眠気が残っていたものの終わった後は清らかな気持ちになりました。
そして、その日は運良く晴天になり、予定通りに農業体験を行いました。私たちは学校の教室では見慣れない格好(ジャージ姿)をし、トラクターに乗ったり、じょうれんで畝を作ったり、蕎麦の種をまいたりしました。この蕎麦は短期間で成長するらしく、またぜひこの地へ戻ってきて成長を確認したいです。
その日から食事は私達の自炊でした。私がお昼ご飯にカレーを作る話をすると、中村さん(お母さん)が私を夏野菜の畑に連れて行ってくれました。そこで一緒に収穫した野菜をたくさん頂き、夏野菜たっぷりのカレーをつくることができました。
お昼を食べた後は日光浴です。午前中の作業で疲れた私達はいつの間にかお昼寝をしていました。起きてすぐからは蕎麦打ち体験でした。1工程ずつみんなで手分けし、また協力しながら手打ち蕎麦が出来ました。
その夜は月明かりだけで電灯一つない場所まで、今回のツアーガイドをしてくださった大台町観光協会の岡本さんに星観察に連れて行ってもらいました。何も考えられず、ただ空一面に散りばめられた星を見ることが初めてで感動しました。そして宿泊所へ帰り、お世話になった岡本さんと私たちの意見交換会をしました。主題であるモニターツアーのアンケートに答え、私達らしい大学生ならではの意見を自由に言わせて頂きました。過疎地域の将来、都市とのつながり、復興していくための対策、また政治に関してや社会問題など、深い話は深夜まで続きました。
三日目、朝から宿泊所の片付けをして記念撮影やお礼を言ってお世話になった皆さんとお別れをしました。
私は今回、農業を体で感じ、温かい人の心に触れ、自給自足の生活や町の復興・将来について考える機会を得ました。これまでも他人事とは思ってはいませんでしたが、成人する私達にこれからの日本や世界にどんなことが必要で何が足りないのかが分かったように思います。自宅に帰ってからこの貴重な体験の話を家族や祖父母などにすると、「とてもいい経験をさせて頂いたね。この経験を大事にしなさい。」と言われました。お世話になった皆さんに感謝をするとともに、私は今回限りでなく、蕎麦の成長を楽しみに今後も大台町に伺いたいと思います。大台町の皆さんと貴重な繋がりができたことを光栄に思っています。
内 海 梨 菜 <姫路東高等学校出身>
>