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設計者との対談

このキャンパスは、未来を信じる大人たちの熱い思いによって形作られているのです。

CUBEキャンパスの設計者である株式会社日本設計 小泉治さんと対談。構想段階での経緯や、関わった人たちの思いについて語りました。

「コミュニケーションする」ことに深くこだわったキャンパスだそうですね?

株式会社日本設計 第2建築設計群 副群長 チーフ・アーキテクト 小泉 治 様

小泉

ただ授業を受けて終わったら帰る、という学校ではないので、そこは最も重要なテーマでした。CUBEの手厚い教育を実現するために、教員と学生の距離をいかに縮めることができるか。学生さんが友だちと何かしたいと思ったときに、それを受け止められる場所があるか、というようなことをいろいろ考えました。
たとえば、仲間と話すとして、内容によって場所を選ぶはず。フォーマルにプレゼンの練習をするのか、カジュアルな椅子に座ってリラックスするのか、もしくは床に座って議論するのか。椅子ひとつをとっても、座面の高さが変わることでコミュニケーションも変わります。

佐藤

CUBEは、授業以外にも4年間をともに過ごす場所、長く居る=暮らすという感覚に近い空間なので、学生がリラックスしたり刺激を与えられたりするキャンパスに、という強い思いがありました。
フロアごとに壁の色が違ったり、いろいろなコンセプトを持った部屋があるのもそういった理由からです。

コミュニケーションということでいえば、ほとんどの部屋が外から見えるように作られている。
教員の専用スペースでさえ、個室はできるだけ小さくして、その代わりに共用のソファーを置いています。先生同士が話したり学生も相談に来られたりするし、その様子もガラス張りなのでお互いに見える。授業だけが教育ではないですから。CUBEの教員はたくさんのことを望まれます。

お二人の出会いでは、衝撃的なエピソードがあったとか。


小泉

最初の提案で、佐藤学部長に「これは違う」と言われたんです(笑)。
私たちなりに、CUBEの目指す教育コンセプトに合わせて、先生と学生の距離をさらに縮めることをテーマにしていたのですが、「それをやるためには、僕はこう考えている。君はどう考えるのか?」と。

佐藤

よくぶつからなかったね(笑)。

小泉

いえいえ。私自身、教育機関のプロジェクトを多く手がけるなかで「授業を提供する」のではなく「人が育つ環境」をつくりたいという思いがあって、アメリカのボーディングスクールを見学したりもしました。
でも、学部長の目指すところはさらに上だった。自分たちもそうありたいと思いながら、現場で望まれていることにはまだ足りなかったのだと思いましたね。

佐藤

それから、僕はイメージするフロアデザインを自分なりに絵に描いて日本設計さんに送ったんです。夜な夜な、小さな椅子を作って設計図の上に置いてみたり、学生たちの姿を想像して一人で微笑んだりしてね(笑)。CUBEで学ぶ学生たちの様子を想像して、デザインを考えるべきだと思ったのです。

具体的には、どんな部分を変更されたのですか?

佐藤

大きく変えたのは、カフェテリア。2階の予定だったのを5階の吹き抜けフロアに移してもらいました。どこかに広場みたいに人が集まる場所がほしかった。ヨーロッパの古い都市にあるような、街の中心となる広場のイメージです。
食事に集まったり、太陽光が入るアトリウムでリラックスしたり、その横には自由に動かせる机や変わった形のひな壇のスペースもある。吹き抜けだから人の気配が感じられます。

最初の設計図は、まだ機能面から見ている感じがあったんです。
この人数の学生を収容するためにはいくつ部屋が必要でということより、授業が終わって部屋から出てきたら、プロジェクトスペースで話し込んだり、ちょっと腰掛けてパソコン開いて・・・とか。学生たちの顔をイメージしないとね。

小泉

それから、この建物は「お互いに見える」ことを重視しているので、壁はできるだけ取り払うことになりました。建築ってある意味壁をつくることでもあるんですが、それを物理的になくす作業のほかに、関係者にとっては精神的な意味でも壁をなくす必要がありました。
途中でガラス張りが壁に戻りかけましたが、最後は学部長から「ドリルで穴を開けるぞ」とすごまれて、すべてがオープンになりました。今となっては笑い話ですが。

見えることによってコミュニケーションが活発になると。


佐藤

実際に影響していると思います。学生は育っていますからね。先日も甲南大学同窓会の会長とCUBE生が話す機会があって「感動した」とお言葉をいただきました。CUBEの学生は礼儀正しく、ちゃんとコミュニケーションができると。

小泉

人間的な魅力が備わっていたからなのでしょうね。コミュニケーションするにあたって、相手に聞いてもらえるような雰囲気を醸し出せるというか、学部長が目指しておられた教育が実践されているんだなと思いました。それは私たちの理想でもあります。

佐藤

ここには、人と人が出会って化学反応が起こる空気があります。
毎日いろいろなことがあって、泣き笑いの人生です。学生と一緒になって人生をつくっているという実感がありますね。

お二人の間にもいい化学反応が起こって、このキャンパスが実現したのですね。


佐藤

よくつき合ってもらったと思っています。
家具の提案までしてもらったのですが、椅子の時はおもしろかったね。大きな部屋いっぱいに、いろいろな種類の椅子がずらっと並んでいて、一つひとつ座って確かめました。こんなこともするんだと驚きましたね。

小泉

あれは担当者の酒井がかなり凝って探しましたから。彼女は実際に見ていただいた椅子よりも何倍もの種類を見て、あの数に絞り込んでいるんです。
佐藤学部長の強い思いを受けて、僕らもそれを少しでも上回りたいと火をつけられたんですよ。

佐藤

仕事のもうひとつ上を目指してやってくれた。「仕事を超えた仕事」だったと思います。

小泉

いや、いいチームだったんです。鹿島建設の現場の所長も、人間は思いで動くんだという考えの人で、魂こめて建物を造るんだと。
関係者のなかで、実は甲南大学の卒業生という人も多かった。やりたいことがどんどん膨らんで何か削らないといけない時も、みんなが知恵を出し合って最小限に抑えることができた。皆さんが母校のために汗をかいてくださったんです。

佐藤

このキャンパスは、いろいろな人の思いがあってできあがった。学生にはそのことを胸に刻んでおいてほしいと思います。

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